布施琳太郎

未来に繋いでいきたい「今の1ページ」
2025/05/13
あなたにとっての「今の1ページ」と題して、未来に繋いでいきたい、大切にしたいもの・こと はなんですか?
布施琳太郎

Photo by 竹久直樹

 

ずっと失恋のことが気になっている。ひとつの関係の終わりになんの理由もないことを知っているのに論理的に語ろうとしてしまうとき、うまく笑えなくて歪む顔、そこに失恋がある。失恋を論理的に説明するみたいに、たくさんの詩や批評を、僕は書いてきました。そんな歪んだ言葉たちを素材にして映像や展覧会をつくってきました。この小さな本屋がオープンする日に30 歳になります。最近は失恋は人間だけのものではない気がする。大地が揺れて道が割れて家が崩れること。地震について話すことは失恋について語るのと似ている気がするのです。この星は真球ではなくて……(まだ29 歳の僕には続きを書くことができませんでした)。

 

(PARCO出版50周年イベント「One Page BOOKSTORE -1ページの本屋-」に寄せて)

 

 

布施琳太郎|Rintaro Fuse

アーティスト。1994年生まれ。スマートフォンの発売以降の都市における「孤独」や「二人であること」の回復に向けて、自ら手がけた詩やテクストを起点に、映像作品やウェブサイト、展覧会のキュレーション、書籍の出版、イベント企画などを行っている。主な活動として個展「新しい死体」(2022 /PARCO MUSEUM TOKYO)、廃印刷工場におけるキュレーション展「惑星ザムザ」(2022 /小高製本工業跡地)、600ページのハンドアウトを片手に造船所跡地を巡る展覧会「沈黙のカテゴリー」(2021 /名村造船所跡地〔クリエイティブセンター大阪〕)、ひとりずつしかアクセスできないウェブページを会場とした展覧会「隔離式濃厚接触室」(2020)など。主な参加展覧会に「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」(2024 /国立西洋美術館)、「時を超えるイヴ・クラインの想像力」(2022 /金沢21世紀美術館)など。著書として『ラブレターの書き方』(2023 /晶文社)、詩集『涙のカタログ』(2023 /PARCO出版)。東京藝術大学美術学部絵画科(油画専攻)卒業。東京藝術大学大学院映像研究科(メディア映像専攻)修了。